9日目 ―定期券(パスケース)―




僕は小さくため息を吐いた。
彼女が帰ったあとの部屋はひっそりと静まり返って、先程までの喧騒が嘘のようだ。

がらり、と小気味良い音をたてて窓を開けた。
すぐさま冬の冷たい風が侵入してくる。
遠くのほうに、ぽつりと見慣れた後姿が見えた。
僕は白い息をゆっくりと吐き出して、もう一度外の空気を締め出そうと窓を、閉め──

「あれ」

ふと、畳の上に落ちた水玉模様に気付く。
あれは、確か……?

「――やっぱり」

1つ年下の彼女に入学祝いだと言ってねだられた、可愛らしい安物のパスケース。
まだ卒業もしてないくせに気が早い、と僕が笑ったら、何故か不機嫌な顔をされたという謎の思い出があるのだ。
彼女はあのときどうして怒ったんだっけ?

そういえば、あれからもう一年も経つ……


ああ、こんな思い出に浸っている場合じゃない。
今大声を出したらご近所に迷惑だし、第一、彼女に聞こえるかどうか。

届けてやらないと。
次に会ったときにひょっこり手渡したのでは十中八九、理不尽な怒りをぶつけられることになるだろう。
そう思い立ってそれを手に取り、そして何気なく開いてみた。

「……うお」

固まった。
自分の顔写真が、満面の笑みでこちらを見つめているのだ。
なんていうか、その、色んな意味で恥ずかしい。

「え、ちょ……こんな写真あったっけ、っていうか、あー──」

ぶつぶつと呟きながら、ポケットから自分の財布を取り出した。
それを開いて、愛しの恋人の笑顔を眺める。
二つ折りのボロ財布の中身はかなり寂しいけれど、その写真のおかげでなんとか生きていられるような状態だ。

──こんな恥ずかしいことしてんの、僕だけだと思ってたんだけどな。




ああ、ああもうそうだ早ク届ケテアゲナクチャ。
幸せや恥ずかしさや色々な感情のせいで緩んだり赤らんだりする頬を必死に引き締めて、手のひらサイズの長方形をポケットに突っ込む。






今から走れば、追いつくだろうか。




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「こっちからの一方通行じゃないんだ」(「信頼されてるっていいもんでしょ」)
……使いたかったけど必死で我慢しました(分かる人にしか分からないネタでごめんなさい)

授業中にいきなりインスピがキたんです。
そんで次の瞬間に半分くらい吹っ飛びました。
慌てて残りをノートに書きとめました。(勉強しろ)

というわけでベタ甘恋愛でした。喉渇くなあコレ……。
高校生〜大学生くらいのイメージです一応。分かんなかったらすいませ、ん・・・

短いのか?こんなもんなのか?よく分かりません。





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